遠き山に日は落ちて…。
 下校時刻が近づくと甘美で郷愁を誘うメロディーが聞えてきます。キャンプファイアー定番曲として口ずさんだ経験―おありかと思います。
 現在のチェコ共和国ボヘミア地方出身の作曲家アントニードボルザークは、ニューヨークナショナル音楽院長として滞在中(1892〜1895)、“交響曲第9番新世界より)”を作曲している。
第2楽章のいくつかのメロディーをもとに没後1922年、弟子のウィリアム・フィッシャーによって『Goin’ Home(帰郷)』という名の楽曲が発表され、わが国でも堀内敬三作詞「遠き山に日は落ちて」と野上彰作詞「家路」として愛唱されている。
 1893年の夏休み、ボヘミア出身の移民がとりわけ多いアイオワ州を訪ねている。西欧合理主義精神のもと作曲や演奏・出版などの毎日にあけくれてきたドボルザークにとって、現地での同郷人との出会いと東欧の家族的雰囲気は、大いなる安息を彼に与えたといわれている。
 さて、わたくしの場合の家路とは…、“両親が健在で優しい二人の姉と一家五人で暮らしていた頃の家路”か“若いころの妻や幼い3人の子どもが出迎えてまつわりついてくれていた頃の家路か”と考えることがあります。
 「家路」とは、結局、心の中にあるものかもしれませんね。そんなこと考えながら今日も帰途につこうとかと思っています…。